革靴のお手入れ。
なんかまた革靴の手入れについて聞かれることがちらほらあったので記事にしてみようと思う*1。
自分がやっているやり方は革靴専門店の店員とか、シューケア・メンテナンス店の職人さんから聞いた話を元にやってる。手入れの対象は一般的な牛革カーフの黒ばかり。茶靴についても少し触れるけれどあまり信用しないでください。スエードとかエナメル、ハラコ、爬虫類革などについては末尾に参考リンクつけるのでそちら参照。
必要な道具
M.MOWBRAY推しなのは気にしないでください。他にもある*2けれど特にこだわりなければ入手性も良いし値段も手ごろだし鉄板かと。
- 着古したTシャツたくさん(柔らかい布ならOK)
- 使い古した食器スポンジ(洗剤できれいにしてから使う。専用スポンジもあるみたい)
- 使い古した歯ブラシ(専用品だと竹ようじとか、ペネトレイトブラシなんてのもある)
- 100均の用服ブラシ x 2個(豚毛、馬毛ならなお可。専用品だとホース(馬毛)ブラシとかブリストル(豚毛)ブラシ。大きいブラシの方が使いやすい)
- (あれば)やぶれたパンスト(専用品だとテレンプという布がある)
- ステインリムーバー(モウブレイ使ってます)
- サドルソープ(モウブレイ使ってます)
- 乳化性シュークリーム(モウブレイ使ってます)
他にもシューツリーがあるとよい、というか革靴にシューツリーは必需なので用意してください。
シュークリーム選びについて
革はもともと薄い茶色のものを染めていろいろな色にしているので、経年で色が抜けて元の色に近づいていきます。なのでシュークリームは無色、黒色、茶色といろいろあるけれど、補いたい色を選んでください。黒靴なら黒色クリーム、茶靴なら少し薄い茶色クリーム。
茶靴については濃い茶色クリームを使えば濃くなっていくし、無色クリームを使えば少しずつ薄くなっていきます。
黒靴、茶靴以外の色の靴は無色クリームで。ちなみに経年で色が抜けるといってもそれほど抜けるわけじゃないから、とりあえず無色クリームだけでもいいかもしれない。あ、黒靴に黒クリームを使うと靴についた傷が目立たなくなるという利点もあります。
手順
革ももともと動物の皮膚なので洗顔とかをイメージするといいです。要は汚れを落として→保湿。
1. 表面の汚れを払う。
2個用意したうちの片方のブラシで靴表面をサッサッと払って乾いた泥や砂、ホコリを飛ばします。化繊毛、豚毛ブラシでも問題ないけれど、より柔らかい馬毛ブラシがあれば最適。
砂は石が細かく砕けたものなので残ったまま、こすったり、クリームを塗りつけたりしたら表面の革がズタズタになるのは想像に難くないかと思います。とはいえ神経質にならずに適当に。底革との境目の隙間は重点的に。
2. ステインリムーバーで表面の汚れとクリームを落とす。
靴ひもは外しておいた方がやりやすいと思います。
布にステインリムーバーを少量つけて、靴表面全体をこする。こすっている部分の布が真っ黒になったら布をずらしてステインリムーバーをつけてこする、を繰り返す。
一通りこすると艶がなくなってマットな感じになるはず。布が汚れなくなるまでこする必要はないというかキリがないので全体を一通りこすったあたりで切り上げる(洗顔も洗い過ぎはよくないのと一緒)。
(雨シミなど汚れが特にひどい時に)表面を石鹸で洗う。
普段の手入れには要らない工程ですが、雨にやられたりして白いシミが出てしまったときは「洗う」ことで回復できます。
古い食器スポンジを濡らして軽く絞った状態で靴表面全体を湿らせていきます。全体が湿った状態になったらスポンジを一旦洗って軽く絞ってから、サドルソープの表面をこすってスポンジを泡立てます。そして靴表面をスポンジで優しくこすって洗っていきます。表面は細かい泡で覆われていきます。飴シミが出ていたところはそれなりに念入りにこすってください。
全体を洗い終わったら、きれいな布でふき取ってください。サドルソープ自体が革の栄養剤にもなっているので水で洗い流す必要はありません。
ポイントとしては汚れをピンポイントで濡らすのではなく、全体を湿らせること。濡れた場所と乾いた場所があると境目に雨シミのような線が出てしまうためです。
このあとシューツリーを入れていったん自然乾燥させます。乾燥させる時にはかかとの下に何か敷くなどして靴底に隙間を作ってください。
3. 保湿と栄養付加のために乳化性シュークリームを塗る。
歯ブラシ(竹ようじ、竹ブラシ)でクリーム少量をすくい取って靴全体に塗りこみます。
靴全体に間隔をあけて、ちょんちょんとクリームをつけてからブラシで擦っていくと万遍なく塗ることができるかと思います。塗り終わるとムラのある光沢感がちょっとだけ出ているかと思います。
4. ブラシで塗られたクリームの均しと余計なクリームの除去を行う。
2個用意したうちの未使用のブラシで全体を優しく丁寧にブラッシングします。この工程ではもちろん馬毛でもいいけれど、よりコシのある化繊毛、豚毛を好む人も結構いるみたい。好みでどうぞ。
たぶんこの工程が一番面白いと思います。なんせ一気に艶が復活していきますので。ササッと全体に艶がでたら十分です。人によってはここまでで終えても問題ないと思います(好みの問題です)。
5. 更なる艶出し。
使い古しのストッキングやテレンプなどでさらに艶を出したい部分を軽く撫でます。全体を撫でてしまうとちょっと品がなくなるので、つま先だけをサッと撫でる程度がいいと思います。
これで靴の手入れは完了です。
更なる探究。
基本の手入れは上記のとおりですが、更なる輝きを求める人は油性ワックスを塗って磨いたり、といろいろな技があるので各自調べてみてください。
よく営業職の方が「靴だけは良いものを履け」なんていいますが、靴については紳士服でも一大ジャンルとして確立されるほどに先達が探究している分野ですので調べてみると面白いです。